ERで用いる経皮的ペースメーカーとは?使用方法をまとめ

ある夜、救急車で「気分不良、意識がもうろうとしている」という64歳の男性が運ばれてきた。
糖尿病の既往があり、以前に低血糖発作での受診歴がある。

一応、ルートとって血糖測ろうと思います。(また低血糖発作かな・・・)

先生、血糖113です。ん?なんか、脈が・・・。

じょ、徐脈!!!

さて皆さん。呼吸はあり、SPO2もOKそう・・・。
こうゆう徐脈性不整脈を見た時にとっさに対応できるだろうか。
まず行うことは・・・➀循環動態の確認 ②循環動態の安定化 ③原因の把握 ④根本的治療
この記事では救急外来で知っておくべき徐脈の最低限、循環動態の安定化に用いる経皮的ペーシングについて適応、具体的な使用法と、それからについてまとめてみるよ。

徐脈の概要

50〜60 bpm未満の心拍数と定義される徐脈。
その原因の特定と症状に対する対応がポイントとなります。

何かしらが原因で心臓伝導系(洞結節、房室[AV]結節、His-Purkinje)に問題が起こるわけです。
洞機能/心房伝導不全AVブロックの2つに大別されます。

  • 不整脈以外明らかな原因なし・老化・遺伝・心筋疾患
  • ACS(特に新規左脚ブロック・Mobitz II型 AVブロック・2:1房室ブロック・完全房室ブロック)
  • 電解質異常
  • 薬剤
  • 甲状腺機能異常
  • 睡眠時無呼吸症候群                 などが原因として考慮される。

徐脈でより素早い対応が必要なものが症候性徐脈(失神、前失神、一過性めまい、立ちくらみ、倦怠感、労作時呼吸困難、心不全症状、脳低灌流に起因する意識障害など)です。

救急医の頭ん中

徐脈か・・・。心電図でST上昇やP波、T波に特徴的な所見はないかな?
症候性(循環不安定)かな?
② 原因は何か考えないとあかんなあ。ACS、高K、低Kは速攻で否定したいな。薬物中毒は…?
③ 酸素投与と薬物治療、ペーシングは必要かな。とりあえずペーシングのパット張っておこう!

【緊急治療】
アトロピン(0.5-1mg)静注 3-5分間隔で投与(max 3mg)
② カテコラミン
ドパミン(イノバン®):2-10γくらい。
アドレナリン:2-10µg/分くらい。
1mgを50mlに溶かすと6-30ml/hr・1mgを500ml生食に混注すると60-300ml/hr
③ 経皮的ペーシング
アトロピン→経皮的ペーシング→カテコラミンのアルゴリズムが基本とされ、ペーシングは速やかに行われるべきである。ただ、適切な鎮静鎮痛、ペーシングの準備に手間取ることが多いので僕は上記➀②③の順番となることが多い。
→循環器コンサルト、経静脈的ペーシングなど考慮

経皮的ペーシングの適応・禁忌

適応:症候性徐脈、循環動態が不安定な徐脈でアトロピンが無効(カテコラミンも考慮)

禁忌:意識があり、循環動態が安定している患者
重症低体温症(心室細動を起こしやすい)
ペーシングパッドを貼る場所の皮膚が異常な場合

実際のやってみてください

急変の可能性が十分あるので蘇生の準備(気道確保、静脈ラインの確保、蘇生薬剤)はしておく。
各施設で使用している除細動器の会社は違いますよね?日本光電?Philips?フクダ電子?ZOLL?
要チェック!!

➀ モニター付き除細動器の心電図モニターを装着

除細動使い捨てパッドの位置は下記。
除細動の位置にパッドを張ると筋肉収縮の不快感が大きい、パッド間のインピーダンスが低くしたい(outputのmAを低くしたい)という点でStandardが望ましいとされているが状況次第ではOptionalで。
僕はほとんどOptionalの位置で使用してきたなと。

Burri Haran, Dayal Nicolas. Acute management of bradycardia in the emergency setting. Cardiovasc Med. 2018;21(04):98-104. DOI: https://doi.org/10.4414/cvm.2018.00554

ちゃんとパッド用のコネクターにつながっているか確認電源ON、ペーシングモードに。

患者説明、鎮静鎮痛を考慮

デマンドモード、60-80bpmで設定→スタート→ペーシング強度(output)を0mAから徐々に上げていき最低出力(コンスタントに心室捕捉できる電流値)が得られたら2-4mA高い値に設定して終了です。範囲としては50-80mAのイメージですかね。

●その他
フィックスモード(自己心拍に関係なく固定ペーシング)でR on Tなどで心室性不整脈の惹起が恐いが、筋電図などで自己QRSを検知できない場合などで間違いがないペーシングではある。
(デマンドモード:自発心拍がある時は、設定レート以下にならないように回数補助的にペーシングする)
・デマンドでの注意点は誘導によりQRSを検知しにくいこともあるのでその場合、感度、誘導の変更を考慮する。
・脈の触知は頸動脈ではなく、上肢動脈や大腿動脈で触診する。筋収縮と脈を見まがうことを懸念。
・長時間のペーシングをする場合は、パッドの消耗(1時間に1回新しくするなど)、パッドによる熱傷(位置を変える)に注意する。可能であれば経静脈的ペーシングなどへ移行。
VFや心静止を見逃さないように。

まとめ

徐脈は原因の検索+徐脈の治療を同時に行う。
アトロピン→経皮的ペーシング(→カテコラミン)。
実際の機械を触ってシミュレーション訓練をしましょう!

【References】
・Sidhu S, Marine JE. Evaluating and managing bradycardia. Trends Cardiovasc Med. 2020;30(5):265-272. doi:10.1016/j.tcm.2019.07.001
・Non-Invasive Transcutaneous Pacing PacingAppNote.fm (philips.com)
除細動器|製品情報|医療関係の皆様へ|日本光電 (nihonkohden.co.jp)H905260D.pdf (nihonkohden.co.jp)H905474.pdf (nihonkohden.co.jp)

コメント