「血尿だ!」「尿路感染症か?」「妊娠か?」:救急外来で使いこなす尿検査!

尿定性、尿テステープ(試験紙法)からわかること

救急外来での3種の神器はエコー、血ガス、心電図と申しましたが、短時間に得られる情報として尿テステープ(試験紙)も十分な力を発揮します。検査室での尿定性も試験紙法によるものでしょう(自動測定が多いと思いますが)。
試験紙にもよりますが多くはpH、尿比重、蛋白質、潜血、ブドウ糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球などである。救急外来で白血球は欠かせないし亜硝酸塩はあってほしいなと個人的に思っている。

1:潜血(陽性)で想起すべきはこと

まず救急外来尿潜血を見た場合の思考は「血尿か?ミオグロビン尿/ヘモグロビン尿か?」である。
血尿は沈査で尿中に赤血球がある
ミオグロビン尿/ヘモグロビン尿は沈査で尿中赤血球がない or 少ない:偽陽性となる。

次に鑑別を想起してほしい。
「尿路感染」「尿路癌(腎癌、膀胱癌など)」「糸球体血尿(IgA腎症、各腎炎など)」「尿管結石・外傷」「ミオグロビン尿/ヘモグロビン尿」である。
つまり、潜血陽性を見た場合、「発熱はないか?頻尿、排尿時痛は?」「肉眼的血尿を間欠的に繰り返してないか?体重減少は?」「咽頭炎の先行は?SLEの既往は?沈査で円柱や赤血球形態異常は?」「背部痛は?」「横紋筋融解の可能性、溶血の可能性は?」といった思考になる。

2:ミオグロビン尿とヘモグロビン尿

尿潜血では赤血球数を換算すると(1+)=約 9 個/HPF、(2+)=約 20 個/HPF、(3+)=約61個/HPFとなる。それを大まかな基準として尿テステープよりも沈査の方が少なければ「赤血球がないのに潜血反応している」=ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿となる。導尿で検体採取していると尿道を少し傷つけて軽度の血尿はありうるので相対的判断となる。
【ミオグロビン尿】
 横紋筋融解で筋肉中のミオグロビンが尿中に漏れることで起きるのでCPK高値があれば疑える。ミオグロビンは尿に排泄しやすいので血漿は普通色(生化学検体で沈殿したあとの血症)。ミオグロビンは排泄されやすい=半減期が短い(数時間程度)ため、CPK高値と尿潜血陽性(ミオグロビン尿)は相関性が高い。CPKが5000 IU/L 以上で尿潜血陽性になる感度が高い。横紋筋融解症の13~50%に腎不全を合併し、特にCPK 5000 IU/L 以上で高率であるのでこの考え方で行くと尿潜血陽性(ミオグロビン尿あり)の場合に腎不全予防のため輸液を積極的に施行する必要があるっと考えることもできる。先述の通りミオグロビンは半減期も短く、CPKの半減期(1.5日)より鋭敏に横紋筋融解の病勢ととらえることが出来そうである。
[N Engl J Med 2009;361:62-72] [J Trauma 2004;56:1191-6][Am J Respir Crit Care Med. 2010;181(10):1128-1155]
 逆に尿潜血が陰性であればその時点でCPKもそこまで高くなく、腎機能障害に進展する可能性も低いわけである。
【ヘモグロビン尿】
溶血で赤血球の中のヘモグロビンが尿中に出ることで起きるのでLDH高値、貧血などから疑える。生化学採取用のスピッツで血漿を見るとピンクである。自己免疫性溶結性貧血(AIHA):寒冷凝集素症など、発作性夜間血色素尿症(PNH)、不適合輸血、体外循環や補助循環デバイスによる機械的な赤血球破壊などが具体的に考える疾患である。

3:尿感染症と尿検査

 救急外来での発熱患者、特に高齢者において尿路感染症(特に腎盂腎炎、前立腺炎)の有無の判断は頻度的にもかなり重要になってくると思う。その診断は本当は発熱、嘔吐、排尿時痛、頻尿、CVA tenderなどの症候がありきであるが症候がない場合も経験するため、細菌尿の有無も含めて尿の検査なしには診断は語れない。
 尿検査については夜間は尿テステープだけしかできないなんていう病院もある(私の病院がそうだというのは残念な話だ)。それに加え、細菌尿・膿尿を確認し、グラム染色➡培養検査という感じが一般的だろう。尿潜血も感染症に多い所見であるが特異的ではないので参考程度である。

尿テステープの白血球、亜硝酸の判断について

もっとも早く、簡便に出る検査であるのが定性である。白血球エラスターゼ(以下、定性白血球)陽性は感度80%程度であり、陰性であれば尿路感染症である可能性は下がるが、症状が典型的な場合は陰性でも否定せずに沈査を確認する。定性白血球>(2+)となってくると特異的であり、尿路感染の可能性はぐっと上がる。
亜硝酸塩は腸内細菌により産生される(腸球菌などGPC以外の細菌叢、緑膿菌も産生しないので大腸菌、クレブシエラ、プロテウスなどの可能性が高い)。亜硝酸塩が陽性となった場合、それ単独で尿路感染症の可能性が高い。感度低い(40-50%)ので陰性でも全然否定できない。
私の考え方は尿テステープで
白血球(+)+亜硝酸(+)➡ほぼ尿路感染決定!
白血球(-)+亜硝酸(+)➡尿路感染症っぽいな。
白血球(+)+亜硝酸(-)➡尿路感染っぽいけど、炎症(腎炎や結石)で出てるだけかも…。
白血球(-)+亜硝酸(-)➡ほぼ尿路感染否定(尿閉だったらどうしよう、少し否定しきるのは…)
つまり、どっちか出たら、しっかり疑いはもって、両方陰性なら違うだろうという感じ。

尿沈査

テステープより間違いない検査である。ただ採取手技上、細菌が混入して偽陽性になることは考慮する必要がある。細菌≧2+ならコンタミの可能性は低く感染の可能性が高いと思うが尿路感染があれば白血球が出ていることがほとんどなので沈査白血球が陰性の場合はほぼ尿路感染否定となる。
沈査白血球(>200個/HPF)も、沈査細菌(≧2+)も、量が多い方が尿路感染症の可能性を高める。
白血球(+)+細菌尿(+)➡尿路感染症、ブドウ球菌菌血症、陰部炎症疾患
白血球(-)+細菌尿(+)➡無症候性細菌尿、採取時のコンタミ
白血球(+)+細菌尿(-)➡腎炎、結石、腫瘍、クラミジアなど
白血球(-)+細菌尿(-)➡正常
抗菌薬内服後であれば上記なんでも尿路感染症の可能性は残る。

2:妊娠と尿検査

妊娠と尿検査に関してのTIPSもいくつかあるのでお楽しみ程度に上げておく。
●尿蛋白は妊婦さんでは特に重要な項目であるのでより注意してみるべき項目である。とくに高血圧の有無も気にするところである。
●妊娠糖尿病の発見のきっかけになるかもしれませんが、ちゃんと検査を受けている人は妊娠初期は随時血糖法、妊娠中期は随時血糖法か50gぶどう糖負荷試験でスクリーニングを受けているのでリスクを判断をされていることでしょう。
●妊娠中の無症候性膿尿は治療適応なので注意しよう。
●尿での妊娠反応検査は基本、「今月、月経が来てないな。」というタイミングくらいで陽性となります。(市販薬は「もう1週間、月経が遅れているな。」くらいのカットオフ値です。)
●私が研修医のころだっただろうか、全血検体を用いて、妊娠反応検査キット使用しても感度特異度は尿とほぼ一緒という論文を読んで興味をひかれたのを今でも思い出します。ただし、保険適応外ですのであしからず。。。

Fromm, Christian et al. “Substituting whole blood for urine in a bedside pregnancy test.” The Journal of emergency medicine vol. 43,3 (2012): 478-82.

まとめ

救急外来でもっとも、ディスポジションを左右するであろう血尿、感染症、妊娠の尿検査に関して入り口を提示した。
他にも目にアルカリ、酸が入ったので洗浄する指標にテステープを用いたり、他の体液でもテステープを使用して診療の参考にすることは多々ある。限界を知りつつも、すぐに診療のヒントを知ることが出来るという点で使いこなすことで助けられることがある。

是非、検査を使用してスピーディーに正しくマネジメントする方法を身につけて欲しい。

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