蘇生の「い」~心肺蘇生の止めどころ~

Tips

前回、ACLSについて長々と書きました。
胸骨圧迫、除細動、エピネフリン、アミオダロン、気道管理、POCUS、そしてECPR。
要するに、「どうやったら、この心臓をもう一度動かせるのか」という話でした。
しかし蘇生には、もう一つ避けて通れない問題があります。いつ、やめるのか。こちらの方が、たぶんずっと難しいです。

「30分やったから、そろそろかな」
「ずっと心静止だし……」
「救急隊からもう40分ですよ」

ERで心肺蘇生をしていると、こういう空気が少しずつ漂ってくる。誰かが明確に「ここまで」と決めたわけではない。でも、モニターを見る回数が増え、エピネフリンを追加する声が少し小さくなり、チーム全体がなんとなく“終わり”を意識し始める。そして、最終的にはリーダーが言う。

「……終了しましょうか。」

この判断。いったい何を根拠にしているのでしょう。経験なのか。時間なのか。波形なのか。年齢なのか。もちろん、蘇生中止を完全に数値化にすることはできません。でも、全部「経験」でよい、という話でもありません。今回は、病院外心停止で搬送され、ER到着時にも自己心拍再開していない、いわゆるCPAOAの成人患者を主な対象として、TOR ruleや蘇生時間、初期波形などのデータから、「いつ、どうやって蘇生をやめるのか」を考えてみたいと思います。


Termination of ResuscitationルールをERで想起する。

蘇生中止と聞くと、まず出てくるのがTermination of Resuscitation、いわゆるTORルールである。
代表的なのがBLS TORルール。条件はシンプルで、
救急隊(EMS)に目撃されていない、搬送前にROSCしていない、搬送前に除細動が行われていない。
この3条件をすべて満たした場合、病院前での蘇生中止を考慮するというもの。
さらにALS TORルールでは、これにバイスタンダーCPRがないこと、一般市民を含め誰にも心停止が目撃されていないことなどを加えて、より厳しく患者を選んでいます。このTOR ruleは性能がとても良いです。

AHA 2025が引用するメタ解析では、
BLS TORを満たした患者33795例のうち生存退院したのは約0.13%。
ALS TORでは10178例中、基準を満たしながら生存した患者は約0.01%でした。
だからこそAHA 2025も、適切なEMS systemではBLS TOR、ALS TOR、Universal TORを使用することを推奨あるいは合理的としています。
なるほど。じゃあERに運ばれてきた患者にもこれを当てはめて、「TOR該当。終了。」でよいのか。そうではない。
そもそもこれらのルールは、病院前で「この患者を蘇生しながら病院まで運ぶべきか」を判断するために作られたもの。ILCOR 2025も、成人OHCAのTORルールを使用するなら、その地域・EMS systemで十分な特異度が確認され、文化や価値観、医療体制まで考慮したうえで実装すべきとしている。エビデンスの確実性もvery lowである。
2024年にJAMA Network Openに出た系統的レビュー/メタでは、29種類のTORルール、43研究、110万例以上を対象に精度が検証されています。もっとも成績が良かったUniversal TORルールでも、感度0.62(95%CI 0.54–0.71)、特異度0.88(0.82–0.94)でした。個人的に重要と思っているALS TORは感度27%、特異度96%。蘇生中止では、特に後者=特異度が重要です。(実際に助かる100人のうち96人は“蘇生継続側”に正しく残り、4人が誤って“TOR成立=中止側”に分類される。心停止患者の生存率を5%と見積もっても:2000人心停止すると仮定して生存100人、死亡900人➡100人*0.96=96人は正しく搬送可能である。4人は本当は生存するにもかかわらず蘇生中止。過程では2000人の心停止をルールのみ区分すると4人生存を見逃す。)。
「感度が低い=本当は死亡する患者をたくさん病院へ運ぶ」だけです。資源利用の問題はありますが、患者の命を失うわけではありません。
一方、「特異度が低い=本来生存する患者をTOR陽性として蘇生中止してしまう。」
だからTORでは、AUCが高いかどうか以上に、特異度がほぼ100%に近いことを求めたいわけです。

日本の全国データでBLS/ALS TORを検証した研究では、TOR基準を満たした患者の予後は確かに極めて不良でした。
BLS TORを満たした11万3140例のうち、1か月後に神経学的良好だった患者は193例、0.2%。
ALS TORを満たした4万1030例では37例、0.1%だった。「ほぼ助からない。」しかし、ゼロではない。ここが蘇生中止の難しさです。

TOR ルールは答えではなく、かなり強い予後情報の一つとして扱おうということです。
だからこそ、ルール一本で判断を終わらせず、複合的に見る必要があります。ここからが本題です。

複合的に見る、5つの視点

蘇生中止の判断は、単一の数値では決まりません。
プレホスピタルでの経過、患者本人の時間経過、年齢やADLといった背景、血液ガスの所見、身体所見—これらを重ね合わせて、初めて「もう十分やった」と言えるラインが見えてくるはずです。

①プレホスの経過・本人の時間経過

目撃の有無、バイスタンダーCPRの有無、そしてno-flow time(心停止ーCPR開始までの時間)とlow-flow time(CPR開始ーROSC or 中止までの時間):この時間軸は、最重要変数です。

ただし、「何分までなら許容できるか」は年齢によって大きく変わります。2026年にJAMA Network Openに出た全国Utstein登録のデータ(n=259851、65歳以上の目撃ありcardiogenic OHCA)では、30日後の良好な神経学的転帰の確率が1%を切るno-flow時間が年齢層別に算出されています。
●良好な神経学的アウトカム推定確率が1%まで低下するno-flow time ➡ 65歳以上の全患者で11分。
65歳ー74歳の方は14分、75歳ー84歳の方は11分、85歳ー94歳の方は2分、95歳以上の方は0分でした。●30日生存期間の推定確率が1%まで低下するno-flow time ➡ 65歳以上の全患者で14分。
65歳ー74歳の方は17分、75歳ー84歳の方は14分、85歳ー94歳の方は11分、95歳以上は3分でした。
実際のERでは「心停止しているだろう状態で救急車要請、バイスタンダーCPRなしの場合は早い地域で7-8分、平均10分は最低no-flow timeがあっただろうと考えられる。この場合85歳以上の生存は1%以下である。」という情報を加味する。(doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.31343)

「このlow-flow timeを超えたら社会復帰ゼロ/ROSCゼロ」という普遍的な境界線はありませんが

蘇生中断を語る場合lowーflow timeがかなり重要であるのでいくつか述べておく。
北米、Reynoldsら 2016, Circulationの研究ではn=11368で神経学的予後良好患者の99%が37分までにROSCしている(目撃あり・バイスタCPRあり・初期shockable rhythmはそれ以上でも良好転帰ありで最長47分)。ただし、救急隊接触以降のprofessional resuscitationがCPR期間として計算されているので注意。DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.116.023309

またフランスの登録研究(Adnet 2017)では目撃のある非外傷性院外心停止27301例で、no-flow time>12分(95%CI 11–13)かつlow-flow time>33分(29–45)になると、予測される生存確率が1%を下回りました。初期波形がVF/pVTの場合は別で、CPRが40分を超えても、no-flowが18分未満なら生存確率は1%を超えていました。初期波形に加えて年齢・性別・発生場所も予測に有意に効いており、「12分と33分」は集団全体を平均した目安にすぎないのであしからず。

他にはGrunauらの2017年論文では、prognostication biasを調整しています。つまり、「もう20分やっている。たぶん助からない」と判断して蘇生を終了する。当然、その患者はROSCしない。すると後からデータを見ると、「20分を超えてROSCしなかった患者は予後不良だった」という結果になる。でも、その一部は本当は、あと10分続けていればROSCしたかもしれないわけです。つまり、「予後不良だからやめた」のか、「やめたから予後不良になった」のかを観察研究では完全には区別できない。ここに注目して解析しております。確かにそうだなと思った。。。
n=5674では、‟その時点までROSCしていない患者”の最終生存確率は28分で1%未満となり、最終生存者の99%以上が36分までにROSCしていた。一方で、全例を40分まで蘇生したと仮定すると、少数ながら追加生存・良好神経学的転帰が得られると推定されている。つまり、30分前後から残存する救命可能性はかなり小さくなるが、早すぎる蘇生中止にも取りこぼしがあるというもの。
DOI: 10.1080/10903127.2017.1356412

Goto 2016(日本、n=17238 DOI: 10.1161/JAHA.115.002819)。この論文は病院到着前にROSCしたOHCAのみを対象にした研究で、良好神経学的転帰(CPC 1–2)となった患者の99%以上がROSCしていたprofessional CPR時間は、VF/VTとPEAで35分、asystoleで42分でした。したがって「35~40分を超えると良好転帰はかなり稀になる」という材料にはなりますが、病院前でROSCしなかった患者(n=215257)が除外されているのでTOR cutoffにはできません。あくまでこの母集団からの結果であることを付言しつつ、動的確率が示されており、CPRを20分行った後、生存率:36.8%、CPC1-2の生存:21.8%。CPRを30分行った後、生存率:0.8%、CPC1-2の生存:0.4%。53分以上CPRを受けた患者は生存なし。

Utstein registryを用いた松山らの2017年研究では、目撃ありで最終的にROSCした成人OHCA 6981例を対象に、professional CPR開始からROSCまでの時間と1か月後の神経学的転帰を調べている。つまりこれは「何分でROSCしなくなるか」を見た研究ではなく、「ROSCまで時間がかかった患者が、その後どこまで元気に戻れるか」を見た研究。
最終的にCPC 1–2となった患者の99%がROSCしていたのは全体44分、shockable 41分、non-shockable 43分だった。いちばん遅くROSCした症例が49〜50分だった。この研究から分かるのは、30分を超えたから良好転帰が消えるわけではないということ。特にshockableでは、長時間CPRの末にROSCした患者にも無視できない割合でCPC 1–2が残る。あくまで40分程度のCPRをしてもROSCしていない患者でその後ROSCした患者100人のうち神経学的に予後良好である確率は1人程度であるということ。もちろん、40分CPRしてROSCしない可能性は度返しである(この研究はROSCした患者だけを解析している。)
同松山らのJAAM-OHCA registryを用いた2022年の研究に非外傷性OHCA 23803例を対象に、professional CPR開始からROSCまたは蘇生中止までをCPR durationとして解析している。これはROSCしなかった患者も含まれ、最終的に16779例は一度もROSCを得られなかった。1か月生存率は、≤20分で32.2%、21–30分で6.0%、31–40分で1.7%、41–60分で0.5%、61–90分で0.2%、91–120分で0.1%。CPC 1–2は、≤20分で20.8%、21–30分で1.2%、31–40分で0.4%、41–60分で0.1%、61–90分で0.1%、91–120分では0%。つまり、30分を超えると生存そのものが1〜2%台、良好神経学的転帰は0.数%の領域に入り、40分を超えるとさらに厳しくなる。ただし、30分を超えてCPRを受けた患者では、若年、bystander-witnessed、初期shockable rhythmが良好転帰と関連していた。特にbystander witnessはAOR 7.66、initial shockable rhythmはAOR 14.70と強い関連を示した。

ある救急医の頭ん中🧠

蘇生時間で考える中止のタイミングとして
30分でかなり厳しい。まだ続ける理由は何か評価する。
ただし、ここまでROSCしていなければ一度立ち止まり、なぜまだ続けるのかを再評価する時間になる。40分前後では、全体としては生存・良好神経学的転帰がかなり稀になっている。特に初期波形がnon-shockable、目撃者なし、長いno-flow(バイスタンダーCPRなしなど)、一度もROSCなし、可逆原因なし、といった悪条件が重なるなら、時間は蘇生終了を支持するかなり強い材料になる。
逆に、目撃あり、短いno-flow、initial VF/pVT、一時ROSC、signs of life、明確な可逆的原因が残っているなら、40分という数字だけで終了するのは早い可能性がある。時間は分かりやすい指標であるが予後良好である群では控えめに鑑みて、下記項目と蘇生への反応を増幅する予後情報として使うのがよい。


②患者背景・年齢・ADL(フレイル)

年齢ももちろん重要であるが、それと同じく重要なのは‟その人にどれだけ予備能が残っているか”。
一般的に指標となるのはClinical Frailty Scale(CFS、1〜9で心停止前の自立度を評価)で、年齢で調整しても予後と関連することが、ここ数年で示されています。英国の院外心停止304例(McPherson, 2023)では、CFSが1点上がるごとに、初期波形が非ショック適応である可能性(OR 1.46)も、死亡する可能性(OR 1.60、年齢調整後)も増え、生存率はCFS 1–3の41.7%に対して7–9では11.5%でした。

ROSC後の転帰でも同じ傾向で、前向き多施設研究(Yamamoto ら、2023、 n=1216)では、良好な神経学的転帰がCFS<5で24.4%、CFS≥5で6.1%(調整OR 0.45)でした。いくつかの研究でCFSが4、5が予後不良のカットオフとして同定されています。さらにTTM2試験のサブ解析(Intensive Care Med 2025、n=1861)では、ROSC後に入院した患者の6か月死亡率はCFS 1–3:40% vs CFS 6–9:92%、良好な機能予後はCFS 1–3:56% vs CFS 6–9:2%でした。調整後の6か月死亡オッズ比はCFS 4で2.7、CFS 5で3.7、CFS 6–9で8.9で、機能予後不良のオッズ比は重度フレイルで35.4(95%CI 8.4–148.8)でした。ただし、これらは「ROSCした人」の中での比較です。フレイルが強いとROSCしにくいのかは、院外心停止では直接のデータがまだ乏しく(院内心停止ではFernandoらが、フレイルでROSCしにくいと報告しています)、重度フレイルでは神経予後評価が少なく生命維持治療の中止が多いという偏りも残ります。TTM2の著者自身も「フレイルだけを理由にCPRを差し控える根拠にはならない」と述べています。他の視点と組み合わせる、判断材料の一つとしては良さそうではありますね。

ある救急医の頭ん中🧠

この蘇生における予後の研究はさすがに観察研究で行うことになる。様々な要素が予後予測因子として挙げられてはいるものの(統計学的に調整はされている)、やはり現場で、ACPや年齢、疾患などで蘇生中止を比較的早期で終了され、ROSCしなかったと結論づけている個別症例があり、その集合体が研究対象である。例えば「フレイルだから予後が悪い」のか「フレイルだと判断された時点で十分な評価をされないまま治療が終わってしまう」のか、因果関係ははっきりさせられない可能性も残っている。フレイルなどいくつかの視点は強力な予測因子である一方、自己成就的予言になりうるリスクを常に内包している。判断材料にはなっても、それだけで結論を出していい視点はあまりない。

③血液ガス所見

血液ガスでは、pH・乳酸・base deficit(BE)が予後と関連します。
2017年のJournal of Emergencies, Trauma and Shock誌(n=170)では、pH<7.0(オッズ比7.20)と乳酸≥5.0mmol/L(オッズ比6.79)が、いずれも入院後5日以内の死亡と強く関連。ROSCした院外心停止372例の日本の研究(Momiyama 2017)でも、良好な神経学的転帰群のpHは7.26±0.16、不良群は6.93±0.19で、pH>7.05が独立した予測因子でした(感度84%、特異度80%、AUC 0.91。乳酸のAUCは0.62)。
2025年のメタ解析(49研究・21120例)でも、pHが高いほど転帰が良く、乳酸が高いほど悪いという向きは一貫してるけど、研究間のばらつきが大きく、普遍的なカットオフは示されてません。
これも、単独では決め手にはならずです。
von Auenmueller論文の著者らも”これらのパラメータのいずれも、単独では早期の予後予測を行うには十分な説得力を持たない”と述べています。
院外心停止1842例を含む2317例の解析(Mueller 2021)では、心停止前後の臨床情報にpH・乳酸・BEを加えても、院外心停止の予測能はほとんど変わりませんでした(AUC 0.823→0.831)。蘇生中の推移を見た2026年の前向き研究(n=160)では、乳酸が1mmol/L下がるごとに持続ROSCの調整オッズ比が1.16でしたが、良好な神経学的転帰とは関連しませんでした。
ERの血液ガスは「原因検索ツール」であると同時に、身体の虚血の度合いを示すという意味では参考になりますがおそらくは心停止時間・波形・目撃といった臨床情報の結果を見ているのでそこがしっかり聴取できる場合はそちら優先にしつつ、裏づけとして使用する感じが良いかなと思います。

④身体所見:瞳孔反射

身体所見の中でも近年注目されているのが、瞳孔反射の定量評価です。ここは少し整理が必要で、従来の「質的な瞳孔所見(対光反射あり/なし)」は、72時間以内は予後予測としての信頼性が低い、というのが教科書的な理解でした。
ところが、赤外線瞳孔計による定量的評価が一石を投じています。日本の多施設研究(関東地方4施設、n=50)では、ROSC直後(0時間)の定量PLRが、90日生存(AUC 0.82、カットオフ3%)と良好な神経学的転帰(AUC 0.84、カットオフ6%)の両方を、他のどの測定時点よりも強く予測しました。6時間時点でPLRが3%未満だった患者は、この研究の中で一人も90日生存していません。
重要な注意点が二つ。一つは、この研究自体がサンプルサイズ50例と小規模。もう一つは、これはあくまでROSCが得られた後、集中治療をどこまで続けるかという第二の判断点の話であって、蘇生中のCPR継続・中止そのものの基準とは局面が違う、ということです。蘇生中の瞳孔反射についても測定自体は報告されていますが、まだ中止基準として確立したものではありません。

⑤蘇生経過そのもの:波形とETCO2

最後の視点は、蘇生そのものの反応性です。前々回のECPRの記事で触れたETCO2>10mmHgという閾値や、前回の記事で描いたフローチャートのように波形がVF/pVTから心静止に移行していく経過は、それ自体が「この蘇生がどこまで反応しているか」を示す情報になります。当たり前ですが持続する心静止、低いまま改善しないETCO2は、他の4つの視点と組み合わせたときに蘇生中止の方向に傾ける材料になります。肌感でも蘇生に反応しない、いつまでやるの・・・っとなりますものね。


一番難しいのは、家族にどう伝えるか?

ここまでは医学的な基準の話をしてきました。
実際のERで一番難しいと思うのは「医学的にやめる理由がある」ことと「家族がそれを受け入れられる」ことの間にある溝だと思います。おそらく、僕もたくさんの家族を気づけてきたと思います。自分も蘇生というシビアな現状でアドレナリンが出た状態で家族に説明をしに行くことが多いです。しかも、医療チーム代表として「蘇生中止を説明し、納得は出来なくても理解してもらう」という目的をもって家族説明に向かいます。もちろん、ROSCしていれば、本人の望む結果を得られる可能性が費えるまでACP、本人の推定意思、家族の意思から治療は継続することになりますが、心停止よりROSCしないだろうと判断される場合は、家族に中止を理解してもらうしかありません。

日本の救急隊が現場で蘇生を中止できる条件は、実はかなり限定的です。多くの地域のプロトコルは、本人の事前指示書(心肺蘇生を望まない意思表示)があり、かかりつけ医と連絡が取れ、メディカルコントロール協議会の医師の指示を仰ぐ、という手順を前提にしています。つまり、現場での中止は「準備された終末期」のケースにほぼ限られていて、「準備された終末期」でさえ、いざその時が来た時にその準備は発揮されないな場合もあります。
突然の心停止の多くは、結局ERに運ばれてから、医師が家族に中止を切り出すことになります。

ちょうどこの記事を書いている2026年9月末、日本集中治療医学会など4学会が、生命維持治療の終了に関する新しい指針を公表したという報道が出ていました。「患者の意思尊重を原則とする」という方向性が報じられています。このテーマが今まさに社会的にも動いている、というタイミングで再度蘇生、蘇生中止と論じていますが次回はこの「生命維持治療の終了と緊急ACP」に関して現場のジレンマととともにまとめようと思います。

僕自身、「残念ですが……」「最善を尽くしましたが……」といった曖昧な前置きで時間を稼いでしまい、結局いつ”死”という言葉を使えばいいのか見失った経験が何度もあります。
死亡告知のためのGRIEV_INGプロトコル(Hobgood, Academic Emergency Medicine誌2005年)これに関しても次の記事で書きますね。

ではこのへんで。。


参考文献

  1. 2025 AHA Guidelines for CPR and ECC. Part 9: Adult Advanced Life Support. Circulation. 2025.
  2. Smyth MA, Gunson I, Coppola A, Perkins GD, et al. Termination of Resuscitation Rules and Survival Among Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open. 2024;7(7).
  3. Kishihara Y, et al. No-Flow Duration and Outcomes After Cardiogenic Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Older Adults. JAMA Netw Open. 2026.
  4. Adnet F, Triba MN, Borron SW, et al. Cardiopulmonary resuscitation duration and survival in out-of-hospital cardiac arrest patients. Resuscitation. 2017;111:74-81.
  5. Goto Y, et al. Relationship Between the Duration of Cardiopulmonary Resuscitation and Favorable Neurological Outcomes After Out-of-Hospital Cardiac Arrest: A Prospective, Nationwide, Population-Based Cohort Study. J Am Heart Assoc. 2016;5(3):e002819.
  6. Goldberger ZD, et al. Duration of resuscitation efforts and survival after in-hospital cardiac arrest: an observational study. Lancet. 2012;380(9852):1473-1481.
  7. Fernando SM, McIsaac DI, Rochwerg B, et al. Frailty and associated outcomes and resource utilization following in-hospital cardiac arrest. Resuscitation. 2020;146:138-144. doi:10.1016/j.resuscitation.2019.11.011.
  8. McPherson SJ, Juniper M, Smith N. Frailty is a better predictor than age for shockable rhythm and survival in out-of-hospital cardiac arrest in over 16-year-olds. Resuscitation Plus. 2023.
  9. Yamamoto, et al. Frailty and Neurologic Outcomes of Patients With Nontraumatic Out-of-Hospital Cardiac Arrest. Ann Emerg Med. 2023. doi:10.1016/j.annemergmed.2023.02.009.
  10. Huang Y, et al. Association between the Clinical Frailty Scale and Neurological Outcomes in Out-of-Hospital Cardiac Arrest: A Retrospective Study. Rev Cardiovasc Med. 2025;26(3). doi:10.31083/RCM26333.
  11. Andertun SG, et al. Impact of frailty on mortality, functional outcome, and health status after out-of-hospital cardiac arrest: insights from the TTM2-trial. Intensive Care Med. 2025;51(12):2367-2377.
  12. von Auenmueller KI, Christ M, Sasko BM, Trappe HJ. The Value of Arterial Blood Gas Parameters for Prediction of Mortality in Survivors of Out-of-hospital Cardiac Arrest. J Emerg Trauma Shock. 2017;10(3):134-139.
  13. Momiyama Y, Yamada W, Miyata K, et al. Prognostic values of blood pH and lactate levels in patients resuscitated from out-of-hospital cardiac arrest. Acute Med Surg. 2017;4:25 doi:10.1002/ams2.217.
  14. Patel NT, Carr CT, Hopson CM, Hwang CW. Lactate and pH as Independent Biomarkers for Prognosticating Meaningful Post-out-of-Hospital Cardiac Arrest Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2025;14(7):2244.
  15. Mueller M, Grafeneder J, Schoergenhofer C, et al. Initial Blood pH, Lactate and Base Deficit Add No Value to Peri-Arrest Factors in Prognostication of Neurological Outcome After Out-of-Hospital Cardiac Arrest. Front Med. 2021.
  16. Srivilaithon W, Srikosai N, Kornthatchapong K, Siripakarn Y. Dynamic changes in lactate and blood acid-base status during cardiopulmonary resuscitation and clinical outcomes in adult cardiac arrest patients: a prospective study. Resuscitation Plus. 2026.
  17. Tamura T, Namiki J, Sugawara Y, et al. Quantitative assessment of pupillary light reflex for early prediction of outcomes after out-of-hospital cardiac arrest: A multicentre prospective observational study. Resuscitation. 2018;131:108-113.
  18. Hobgood C, Harward D, Newton K, Di Francesco L. The Educational Intervention “GRIEV_ING” Improves the Death Notification Skills of Residents. Acad Emerg Med. 2005;12(4):296-301
  19. 生命維持治療の終了に関する指針(日本集中治療医学会等4学会、2026年9月28日公表).

コメント

タイトルとURLをコピーしました