指ブロック
いくつかの方法があるが大きくは3つである。
・皮下注入法(the subcutaneous block):1回刺し。痛みが少ない。背側の麻酔効果が低い(特に基節骨の背側)
・腱鞘内注入法(the transthecal block):1回刺し。神経損傷リスク低い。手技後疼痛の懸念。
・Oberst法(the finger web space block):2回刺し。神経損傷のリスクあり。背側、爪床への麻酔効果が他より高い。
皮下注入法(the subcutaneous block)
掌側、掌と指の境のシワの部分に1回だけ浅く注射する。皮膚をつまみ上げ、中心線、遠位方向に45度の角度で挿入する。
1%リドカインを皮下組織に2-3ml注入する。
最低3分は待ってから処置を開始する。穿刺が表面すぎ浅すぎだと薬液が入っていかないので注意。
指背側の効きが悪く、特に基節骨レベルの高さの処置には向かない。
腱鞘内注入法(the transthecal block)
掌側、MP関節上のシワ付近より遠位に45度の角度で1回だけ深く穿刺し、屈筋腱鞘内に1%リドカイン2-3ml注入する。
45度で穿刺したら基節骨に当たるまで前進し、骨にぶつかっている状態でシリンジを軽く押すと抵抗があるが、そのまま2mm程度引き抜いたところで抵抗がなくなる(屈筋腱鞘内)。そこで注入する。
文献では上記のように書かれていることが多い。
しかし、MP関節付近のシワから45度ではなく、「掌と指の境のシワの部分に90度で骨にあたるまで針を進め、2-3mm引き抜いてたところで遠位方向に45度傾けて注入」という文献もある皮下注入法の深いバージョン的なイメージである。
関節穿刺をしないこと、針先が腱鞘内であり、方向が指先に向けて注入することさえできていればOKであり、私は掌と指の境のシワに垂直に穿刺してブロックしている。7分は待って処置を開始する。
Oberst法(the finger web space block)
背側より穿刺する。指の両サイドであり2回穿刺となる。
注射部位はMP関節の1cmほど遠位ウェブスペース:水かき見たいなところである。
刺して2mm程度の浅い部位にゆっくりと1%リドカイン1.5mlを注入し、 そのまま針を進め、 深い部分にも1.5ml程度を注入する。計6ml程度の局麻薬がいりそうである。うまくやらないと他の方法より成功率が低いとされる(60-92%)。背側、爪床の処置には良い。5分待って処置開始。
至極当たり前であるが、麻酔薬アレルギーの方には注意が必要であるし、1%リドカインであれば10ml程度にとどめたい(極量20ml)。
指ターニケット
ポイントは指先の穴を小さめにすると駆血効果が高い。もしくはもともとサイズ6の手袋や小指の部分を使用するなどして駆血できるようにする。
駆血は痛いので可能であれば麻酔後の方が優しいと思う。
注意は処置時に穴あきシーツなどをかけてしまうと駆血部が見えないので、ターニケットを解除せずに帰宅させるなどの恐ろしいことにならないようにしよう。駆血時間は90分以上にならないように。
参考
Gottlieb, Michael et al. “Digital Nerve Blocks: A Comprehensive Review of Techniques.” The Journal of emergency medicine vol. 63,4 (2022): 533-540.
Kim, Hyeonwoo et al. “Validation of digital tourniquet pressures: An experimental comparison of T-RingTM and conventional surgical glove in human volunteers.” Medicine vol. 99,47 (2020): e23149.
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