この記事では point of care ultrasound (POCUS)つまり ❝ちょいあてエコー❞ について紹介します。
時間のかかる「エコー(超音波)検査を技師さん、専門医に依頼する」というプロセスの前に自分でエコーをすることで迅速に診療の方向性を決定づける情報を得たり、低侵襲で診断に近づくことが出来るPOCUSは医師にとって、とてもよいツールなんですね。
バイタルサイン、問診、診察はもちろん大切です。
しかし、症状をうまく訴えられない患者さんに限られた時間で対応しなければならない救急現場でエコーは特に力を発揮します。
POCUSの実際
日本の臓器別エコーの技術は高く、最先端で世界に誇れるものです。
しかし、POCUSという観点では欧米、他のアジア諸国に遅れをとっているのが現状のようです。
臓器別のエコーは「その臓器に、異常があるか各項目を順に見ていく(系統的、網羅的)」のに対して、POCUSは「目的を達成するために(goal-directed)、問題を解決するために(problem-solving)エコーですばやく情報を引き出す1)-3)。」というイメージ。
例えば、「ショックの患者の原因の狙いをつけて診断するためのエコー検査」 を体系化したのがRUSH examだったりするわけです。
ERでは「診断、アセスメント、手技のサポート」に用い、ICUでは「モニタリング、経時変化の評価、手技サポート」にも役立ちます。
POCUSの例を一部リストアップしておきます!
- E-FAST (extended FAST)
- RUSH exam
- BLUE protocol
- FATE/ Focused cardiac US/ POC心エコー
- CASA exam
- 2-point US
メリットとデメリット
POCUSのメリット、デメリットを意識することは重要です。
特にデメリットを知らないと診療に悪影響が出てしまいますので頭の隅に入れておきましょう!
【メリット】
アクセスが良い
迅速
低侵襲
繰り返し可能
【デメリット】
検者による質が差が大きい
診療医の認知バイアスの影響をもろに受ける
エコーの教育機会が少ない@日本
他者との情報共有が他の画像検査より難しい
救急外来や在宅現場でも、比較的気軽にできるようになった。しかも侵襲は低く、リアルタイムで情報がえられ、経時的に何度も見直せるというメリットがある。
しかし、そもそもエコー検査全般に言えることだけど、質は検者依存になる2)。
ポイントを絞ったエコーであるPOCUS では検者依存度がより高まる可能性があるわけです。
疑陽性は、不必要なの検査を増やし、診断治療のミスリードを起こす可能性がある。
もちろん、偽陰性は病態の見逃しを引き起こします。
これらを防ぐには上記メリット、デメリットを頭で意識すること。
また、エコーを過信せず、体系化されたアプローチ方法をしっかり勉強することが大事です。
また、問診診察を怠らず、臨床推論の役にたてることが重要だと思います。
まとめ
目的を意識し、的をしぼったエコー検査をPOCUSという。
「エコーであるのでその質が検者の技術に依存する。」「臨床推論を前提に的を絞っているので認知バイアスを受けやすい。」などのデメリットをふまえた上で行えば患者にとって低侵襲で、すばやく情報を得られるツールである。また近年はエコーへのアクセスも良くなってきており、ポータブルもある。
コストの側面も考慮に入れるべきであるが、ある程度のエコー技術を身につければ、すぐに使える。
ドンドン ❝ちょいあて❞して 患者さんのHappyを勝ち取ろうではないか!
1) Moore CL, Copel JA. Point-of-care ultrasonography. N Engl J Med. 2011;364(8):749-757. doi:10.1056/NEJMra0909487
2) Whitson MR, Mayo PH. Ultrasonography in the emergency department. Crit Care. 2016;20(1):227. Published 2016 Aug 15. doi:10.1186/s13054-016-1399-x
2) (Toru Kameda), 亀.徹. and (Nobuyuki Taniguchi), 谷.信. (2015), 急性期診療におけるpoint–of–care ultrasonography(Point–of–care ultrasonography in acute care settings). Nihon Kyukyu Igakukai Zasshi: Japanese Journal of Japanese Association for Acute Medicine, 26: 91-104. https://doi.org/10.1002/jja2.12018
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